3つの給水方式
多くの実験動物飼育施設では、動物への給水には以下の3つの方式のどれかが採用されています。即ち、給水ボトル、給水パウチまたは自動給水です。
給水ボトル方式は、飼育ケージの蓋に給水ボトルを設置する給水方式です。
給水パウチ方式は水が充填されたパウチにプラスチック製の給水バルブを取り付けて、ケージの蓋において給水する方式です。
自動給水方式は、ケージに設置されている給水バルブを通じて給水します。
それぞれにメリット・デメリットが存在しますが、給水メカニズムや取り扱い等から3つの給水方式の違いを考察します。
1.給水メカニズム
給水ボトルの口先の先端では、表面張力により水が止まっています。動物がこの口先に口をつけて水を吸い取ると、水の表面張力が破れて水が供給されます。動物が口を離すと、再び表面張力が働き、水の流れが止まります。
給水パウチと自動給水は、給水バルブを用いて動物に水を供給します。動物が給水バルブの先端のステム(細い棒状の部品)に触れると、バルブ内部のダイヤフラムの流路が開いて水が供給されます。ダイヤフラムは通常閉じており水は供給されません。動物がステムを操作したときだけ開く構造になっています。
バルブを使わない給水ボトルの場合、動物が飲水する際に給水ボトル内部へ気泡が入り内部の水への影響の懸念があります。
2.給水される水の量
給水ボトルと給水パウチから供給される水の量は、ボトルやパウチ内の容量に依存します。
例えば、250mLの給水ボトルの水がすべて消費されると、新たに給水ボトルが交換・補充されない限り、それ以上の供給はありません。給水パウチも同じです。
供給される水の量が限定されるという事は以下のような利点が考えられます。
・漏水が発生した場合、ボトルまたはパウチ容量以上の被害は生じない
・消費量から動物の飲水量を調べる事ができる
・薬液を注入した試験が可能
自動給水は水の供給元→室内配管→飼育ラックのマニフォールド→給水バルブを通じて給水されるので、給水元からの水が止まらない限り無限に給水されます。
また、自動給水ならではの定期的なフラッシングにより、配管内部の水は常に新鮮で清潔な状態を保つことができます。
自動給水は水漏れが発生してその発見が遅れた場合は、被害がそれだけ大きくなるというリスクがあります。これに対しては、給水バルブの改良、水漏れ時のアラーム、ケージの給気ポートによる洪水対策(AllentownのFlood Mitigation)などで対応がされています。
3.消耗品
給水ボトルは、頻度は高くありませんが、口先やボトルが劣化してくると交換する必要があります。給水パウチはパウチとバルブは1回限りの使い捨てのため、3つの方式の中で最も消耗品を消費します。
自動給水は給水バルブ内の部品、室内配管の途中のフラッシング用の電磁弁内部のダイヤフラム等の消耗品の交換が数年に1回以上は必要です。
4.生産性
給水ボトルは他の方式に比べて労働集約的であると言えます。特に、充填、滅菌、運搬、設置などの作業が定期的に必要であり、これらの作業は手間と時間がかかる重労働です。
給水パウチは、給水ボトルのような再利用の工程はありませんが、給水ボトルと同じく運搬と設置が必要な重労働作業です。
自動給水はこれらの労働集約的要素を排除した最も生産性の高い給水方式と言えます。
(From Avidity Science Newsletter No. 15 issued on October 16, 2023)
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