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実験動物用飲水サンプリング・プロトコル


1.はじめに

実験動物の健康を守るためには、彼らが飲む水の品質を確実にすることが重要です。そのためには、水中の大腸菌群、総生菌数、特定の病原体などを定期的にチェックする必要があります。正確な細菌学的分析を行うには、水サンプルの採取にあたって汚染を避けるための特別な手順を踏む必要があります。こここでは、お客様の自動給水システムから正しい方法で、プロセスを代表するサンプルを採取するための標準作業手順(SOP)を作成するのに役立つ情報をご提供します。

2.サンプリング頻度

サンプリングは一般に週に1回、月に1回、または年に4回という頻度で実施されます。プログラム開始時には、細菌レベルの変動を正確に理解するため、初期段階でのサンプリングをできるだけ頻繁に行うことが推奨されます。

3. サンプル採取箇所の選択

サンプル採取箇所は、水質を総合的に評価するために慎重に選ばれます。具体的には、以下のような箇所が考慮されます:


• 水処理プロセスの前後:逆浸透(RO)処理や濾過処理が完了した直後、および貯蔵タンクの後ろの水をチェックします。
• 室内配管:自動給水装置が設置されている動物室内の、最終的なクイックディスコネクト(QD)ポイントからサンプルを採取します。特に、水処理施設や建物の入口から最も遠い位置にある動物室を選んで、最悪の状況下での水質を評価します。
• ラック・マニフォールド:飲水用のバルブやラックのドレインバルブからもサンプルを取ります。

これらの箇所からのサンプル採取により、システム全体の水質を正確に把握し、必要な改善策を講じることができます。

4.サンプリング手順

水質検査のためのサンプル採取においては、以下の手順を厳守します(参考:Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater)

(1)滅菌されたサンプルボトルの使用:汚染を防ぐため、あらかじめ滅菌処理されたボトルを使用します。

(2)塩素処理水の準備:残留塩素を無効化するため、サンプリング前にチオ硫酸ナトリウムや他の還元剤をボトルに加えます。これにより、サンプルが輸送中に殺菌作用を持続しないようにします。

(3)採取地点での準備:水を汲む直前までボトルを閉じた状態に保ち、ボトルの開口部に直接触れないようにしながらキャップやストッパーを外します。サンプルを採取する蛇口は、余計な付属品がないものを選びます。

(4)フラッシング:サンプルバルブを全開にして2-3分間水を流し、その後流れを調整してボトルに直接水が注げるようにします。蛇口の衛生状態に不安がある場合は、次亜塩素酸ナトリウム液で予め消毒し、さらに2-3分間フラッシングを行います。

(5)サンプル採取:ボトルに水を直接注ぎ入れ、分析前に容易に混ぜられるよう、最低でも2.5cmの空間を空気層として残します。直後にボトルを密閉します。


これらの手順に従うことで、正確で信頼性の高い水質データを得ることが可能になります。

5.保持時間と温度

サンプルは採取後、できるだけ早く分析する必要があります。もし1時間以内に分析できない場合は、輸送中サンプルを10℃以下で保つためにアイスボックスを使用してください。輸送にかかる時間は最大でも6時間までが推奨されますが、24時間以内であれば許容されます。全てのサンプルについて、保管時間と温度は記録し、後でのデータ分析に活用してください。

6.自動給水システムからのサンプリング

自動給水システムからのサンプル採取では、単にタップを2-5分間フラッシングするだけでは、システム内の水を正確に代表するサンプルを得るのが難しいことがあります。フラッシングとは、サンプル採取前に蛇口(タップ)を2分から5分間開けて水を流し続けることで、配管内の古い水や蛇口に付着する可能性のある汚染物質を洗い流す手順です。これにより、採取される水サンプルがシステム全体の水質をより正確に反映するようにします。以下に、この問題に対処し、室内配管やラック・マニフォールド内の水を効果的にサンプル採取するための具体的手順を示します:

室内配管の場合:オートクレーブで滅菌したクイックディスコネクト(QD)プラグを使用し、サンプリング対象のQDソケットに挿入します。細菌検査のサンプルを採取する前に、500-1000mlの水を別の容器で採取して捨てることで配管をフラッシングし、新鮮な水を得ます。

飲水バルブとラック・ドレーンバルブの場合:サンプリング前に、1Lの水に100mlのブリーチを混ぜた溶液でバルブの外側を消毒します。その後、各バルブを操作し、最初の50-200mlの水を排出してからサンプルを採取します。ラック・ドレーンバルブからサンプルを採取する場合も、同様に50-200mlの水をフラッシングして別の容器に捨てます。


これらの手順を適切に実施することで、実験動物用の飲水のサンプル採取における精度と一貫性を向上させ、より信頼性の高い水質データを得ることが可能になります。

参考文献:American Public Health Assoc. 1992. Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater, 18th ed., Washington D.C.

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