バイオ・セーフティー・キャビネットに課された命題

相反する課題の克服
バイオ・セーフティー・キャビネットには、①人員、製品、環境の保護という重要な役割が求められます。しかし、それらを実現するために、その設計はしばしば②操作性と機動性を制限されることがあります。
特に、動物の移送やケージ交換のような手順では、②作業エリアへの容易なアクセスと機動性が重要な要素であるため、これらの要件を満たす機器の設計は困難は課題となることがあります。
即ち、通常のバイオセーフティーキャビネットは、前面アクセスのみを提供し、サッシュの高さやケージのサイズなどの制約があるため、作業効率が低下することがあります。また、移動が困難であるため、機動性も制限されることがあります。
それでは、
①人員保護の重要性も担保しつつも
②作業エリアへの容易なアクセスと機動性を犠牲にしない
ためにはどうすれば良いのでしょうか?これが、バイオ・セーフティー・キャビネットに課された命題です。
米国Baker社のAniGARD e3 Animal Transfer Stationはこれらの2つの課題を如何に克服しているかご紹介します。

1.エア・カーテン
作業エリアから外部へ汚染物質の流出は避ける必要があります。そのために、AniGARD e3は強力なエア・カーテンを作業エリアを形成する事で、これを防ぐことができます。
上の図は、AniGARD e3を横から見たイメージ図ですが、製品の上部からHEPAフィルターを通過した空気が、Diffuserを通過して一方向へ流れます。作業スクリーンのすぐ横は作業エリアの中心よりも速い流れの空気を送る事で、強力なエア・カーテンを形成することができます。
この結果、②ユーザーの操作性を損なうことなく、①汚染物質の外部への流出や、反対に、作業エリアへの侵入を防ぐことができるので、作業者と動物の安全性の保護が確保できます。

2.HEPAフィルターと高い空気清浄度
AniGARD e3はISOクラス4(クラス10)の空気清浄度を提供し、使用者のアレルゲンへの暴露を減らすことができます。
※ISOクラス4(1㎥あたりの0.5マイクロメートル以上の粒子数が352個未満でなければなりません)
この高い空気清浄度を維持するためのAniGARD e3の空気の流れをご紹介します。
上図はその空気の流れのイメージ図ですが、AniGARD e3の空気の流れは以下のようになっております。
① HEPAフィルターを通した空気が、垂直に下向きの流れで作業エリアに供給されます。
② 空気は作業面の下にあるプレフィルターを通過し、大きな粒子が捕捉されます。
③ ブロワーが空気を垂直ダクトを通してキャビネットの上部へと強制します。
④ 空気の半分がHEPA供給フィルターを通過して作業スペースに入り、残りの半分がHEPA排気フィルターを通過して実験室に放出されます。

上記の図は、AniGARD e3の作業エリアを21か所で粒子のサンプリングをした結果です。1立方フィートあたりの粒子の数を示しておりますが、最も多いエリアは右上の9個ですが、これは、318粒子/㎥に相当します。即ち、ISOクラス4の基準である352未満をを満たしております。
このテストにより、AniGARD® e3の作業エリア内の空気が非常にきれいであることが確認できます。このことは、動物がケージ交換の際に、外部の汚染物質にさらされるリスクが非常に低いことを意味します。

3.効率性と柔軟性
AniGARD e3の3面作業エリアと広々とした作業面は、複数のオペレーターが同時に作業できるため、作業効率が向上します。即ち、1人でも、対面スタイルで2人でも、AniGARD e3をコの字に囲んだ3人での作業も可能です。座って作業する場合の、膝のスペース開口部を設けています。これらの特徴は、作業ニーズにマッチしており、人間工学的にも優れていると言えます。
また、作業スクリーンを跳ね上げる事で作業面を広く開放したり、作業スペースの高さを容易に調整することもできます。
これらの特徴によりAniGARD e3 Animal Transfer Stationは
①人員保護の重要性も担保しつつも
②作業エリアへの容易なアクセスと機動性を犠牲にしない
この2つ困難な課題を克服しています。

(From Avidity Science Newsletter No. 9 issued on September 4, 2023)
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